被災地に、冬が来る。

前回(7月)の
『支援物資お届け隊』では
被災者の
御用聞きボランティアに
徹した。

今日は
ハンドマイクを担いで
『食料や衣類etc、お届けに来ました～。お気軽にどうぞ～』
と、呼びかけて歩く。


今回は
仮設住宅での
お届け隊ではない。


津波に
襲われた家で
暮らし続ける
住宅街に
入った。


一階部分が
壊滅している
半壊住宅の
多い地域。


路地を
歩きながら
マイクで
案内を
つづける。


玄関が
メチャメチャに
つぶれている
お宅の庭から
お婆ちゃんが
出てきた。


『どこでやってるの？』
『全部もっていかれたから、物資は何でも有難い』
と、声をかけてきた。


庭の奥には
洗濯物が
干されている。


つぶれた家で
暮らしているのだ。


『なんで、あたしみたいなバアサンが生き残っちゃったんだろうね』と
申し訳なさそうに
私に
笑いかけた。


マイクで
呼び掛けていると
損傷の激しいお宅から
人が
次々に
出てくる。


『ありがとう』
『もらいに行ってもいいですか』
と、声をかけていく。


一階部分が
空洞になっている
アパートでは
二階の部屋から
若いお母さんが
降りてきた。


そして
支援物資の
野菜、日用品、米は
すべて
なくなった。


大量の
ホッカイロも
なくなった。


とくに
冬物の衣類は
とぶように出た。


子ども服は
『サイズが合えばなんでも』
と、若いママたちが
手に取っていく。


大学生の息子と二人
車の中で
津波にのまれ
窓ガラスから
なんとか脱出した
お母さんは
何度も
そのときの
話をしてくれた。


『高齢の母に・・・』
と、数枚の
セーターを
選んでいった。


被災地に
冬が
やってくる。